哀しみの渦
現役時代、冗談で「総武線で中年サラリーマンが自殺」と出たら、私かもしれないから確認してください。と言ってきました。もちろん、そんなことが起こるとは本人も思っていません。
「シナサンが壊れた」というメールが飛んだそうです。確かに壊れる寸前です。
考えてみれば、カラチに赴任した2年前にもパワハラにあい、「辞めて日本に帰る」と派遣元に連絡しました。まだ、その頃は乗り越えるだけの気力が残っていました。今回はちょっと違っています。
夜、眠れないのです。あれをどうしよう、これをどうしよう、と常に考えてしまいます。明け方5時か6時にうとうとすると、7時30分に護衛か運転手が起こしにきます。「ごめん、寝坊した」と言って出勤します。
業者からは、シナサンから夜中の2時とか4時にメールが入る。「シナサン、どうかしましたか」と問われます。「ごめん、気になったから忘れないうちにメールした」と言っておきました。
お腹がすかないのです。昼食時間も仕事ができます。体重も落ちてきてダイエットにちょうど良い、とうすぶいていました。
そして、仕事のミスが増えました。それも簡単なケアレスミスばかりです。
ミスした仕事のやり直しでまた仕事量が増えます。
オーバーキャパなのに仕事が降ってきました。事情も理解しています。仕事は好きです。私でできることなら私が進んでやりたい、と思っています。休日出勤でも、家に持ち帰ってでも仕事はやりたいほうです。そして、楽しく、やりがいのある仕事をしたいと願ってきました。しかし、
over capacity+to do the job+redo mistakes=∞
非正規派遣労働者には仕事を任せてもらえません。それが分かった時「心が音を立てて壊れていく」ような気がしました。そして、私の周りには、だれも助けてくれる人がいないことに気づきました。誰も助けてくれない。現役時代は誰かが助けてくれました。それがいないのです。これが大きかった。哀しみの渦が足元から上がってくるような気がしました。
電気が使えない、テレビが付かない、Wi-Fi が使えない・・・彼らにとって、私はただの「用務員のおじいさん」なのです。
私はここには存在していないのです。いいえ、存在してはいけないのです。
哀しみの渦は心まで覆ってしまうような気がします。
私は何なのですか
あなたは私を何だと思っていますか
私はあなたのために身を削って作業をします
私は修理道具ですか
私もあなたと同じ人間です 心があります
あなたは私の心に気付いていますか
あなたに 私が見えますか
あなたに 私の声は届きますか
あなたに 私の哀しみの渦が見えますか
あなたに 渦の中の私が分かりますか
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